「もう3日もうんちが出ていない…大丈夫?」
「うんちのたびにすごく苦しそうで、見ていられない」
「病院に行くべき?それとも家で様子を見る?」
赤ちゃんの便秘は、育児中にほぼ必ず直面する悩みです。しかし実際には、
👉「何日出なければ便秘なのか」
👉「どこまで様子見でいいのか」
が分かりにくく、不安になりやすいポイントでもあります。
特に第一子の場合、赤ちゃんの「普通」がわからないため、何日も排便がないとパニックになってしまうこともあります。かといって、本当に危険なサインを見逃してしまうのも避けたい。そのバランスの取り方が、この問題の難しいところです。
この記事では医師の視点から、
- 赤ちゃんの便秘の正しい考え方
- 月齢・授乳別の特徴
- 今日からできる具体的な対処法
- 受診の目安(見逃してはいけないサイン)
を「迷わず行動できるレベル」で解説します。

結論:便秘は「日数」ではなく”状態”で判断する
まず最も重要なポイントです。
👉 赤ちゃんの便秘は「何日出ていないか」では決まりません。
「3日出ていないから便秘」「5日出ていないから病院に行かなきゃ」と日数で判断しがちですが、これは必ずしも正しくありません。医学的には、
👉 「排便が困難(つらそう・硬い)」な状態=便秘
と考えます。つまり、日数ではなく「赤ちゃんが苦しんでいるかどうか」「便の性状がどうか」が判断の軸になります。
たとえば母乳育児の赤ちゃんでは、1週間排便がなくても機嫌よく過ごしており、出たときに普通の軟らかい便が出る——こういったケースは便秘とは言いません。一方で、毎日排便があっても、そのたびに顔を真っ赤にして長時間いきんでいる、または硬いコロコロした便しか出ないという場合は、便秘として対処すべき状態です。
便秘を疑う3つのサイン
以下のどれかがあれば、便秘の可能性があります。
- 排便時に強くいきんで苦しそう(顔が赤くなる、泣く)
- 便が硬い(コロコロ・ウサギ状・出口で詰まる感じ)
- お腹が張っている/機嫌が悪い(普段より不機嫌、抱っこしても泣き止まない)
👉 日数より”苦しさ・便の性状”が重要です。この3点を日々の観察の基準にしてください。

月齢・授乳方法でここまで違う
赤ちゃんの排便パターンは、月齢や授乳方法によって大きく異なります。「うちの子だけおかしいのかも」と心配する前に、まず月齢別の「普通」を知っておくことが大切です。
新生児期(0〜1ヶ月)
- 授乳のたびに排便することも多い
- 排便が少ない場合は哺乳量不足のサインのことも
👉 体重増加とセットで評価するのが重要です。
生後まもない赤ちゃんは、胃腸の動きが活発で、母乳やミルクを飲むたびに胃結腸反射が起き、排便が促されることがよくあります。この時期に「あまり便が出ない」と感じる場合は、便秘よりも哺乳量が足りていないサインであることがあります。体重が順調に増えているかどうかを必ず確認しましょう。

母乳育児
- 消化吸収率が高く「カス」が少ない
- 数日〜1週間出ないことも珍しくない
👉 機嫌良好・軟便なら基本的に問題なし。
母乳は消化吸収率が非常に高く、便として排出されるカスが少ないため、排便頻度が低くなりやすいのが特徴です。日本では「毎日出ないと便秘」と思われがちですが、母乳育児の場合は1週間出ないこともあり得ます。ポイントは、機嫌が良く、授乳が普通にできていて、最終的に出た便が硬くないかどうかです。
ミルク育児
- 母乳より便が硬くなりやすい
- 2〜3日+硬便なら介入を検討
ミルクは母乳に比べてたんぱく質やミネラルが多く含まれており、便が硬くなりやすい傾向があります。2〜3日出ない状態が続き、かつ硬い便しか出ない場合は、後述の対処法を試してみましょう。
離乳食開始後(5〜6ヶ月〜)
便秘が最も増える時期です。理由はシンプルで、
- 食物繊維の増加(腸がまだ慣れていない)
- 水分摂取の相対的低下(母乳・ミルクの量が減る)
- 腸内環境の変化(食べるものが変わる)
👉 「食事が始まる=便秘リスクが上がる」と考えてOKです。
特に鉄強化食品(鉄強化米・鉄入りベビーフード)を積極的に摂っているケースでは、便が硬くなることがあります。これは鉄が腸内細菌叢に影響を与えるためで、鉄不足は防ぎたいが便秘にも気をつけたい——というバランスが必要な時期です。水分補給と食物繊維を意識しながら進めましょう。

今日からできる対処法
便秘の対処法はいくつかありますが、リスクが低く効果が期待できるものから順番に試すのが基本です。
① まずはこれ:お腹マッサージ
- おへそ中心に「の」の字(時計回り)
- 手のひらで優しく温めるように
- 授乳直後は避ける
👉 最も安全で、最初にやるべき方法です。
腸は時計回りに動いているため、同じ方向にマッサージすることで蠕動運動を助けることができます。おむつ替えのついでに1〜2分程度行うと、習慣化しやすいです。力を入れすぎず、赤ちゃんが嫌がらない程度の優しい力加減で行いましょう。お風呂上がりの血行が良い時間帯も効果的です。

② 次に:足の運動(自転車こぎ)
- 仰向けで足を交互に曲げ伸ばし
- 1日数回、おむつ替え時に
👉 腸の動きを直接刺激できます。
両足を持ち、交互に膝を曲げて自転車をこぐような動きを繰り返します。この動作が腸に物理的な刺激を与え、内容物を肛門方向へ送り出す効果があります。赤ちゃんも遊びの感覚で受け入れやすく、マッサージと合わせて毎日のルーティンに取り入れやすい方法です。
③ 離乳食期なら:水分調整
- 白湯・スープ・少量の果汁(6ヶ月以降)
- プルーン・りんごは有効
⚠️ 6ヶ月未満は基本不要(母乳・ミルクで十分)
離乳食が始まっている赤ちゃんには、こまめな水分補給が便秘予防・改善に効果的です。プルーンはソルビトールという糖アルコールを含み、腸内に水分を引き込んで便を柔らかくする働きがあります。りんごも同様にペクチンという水溶性食物繊維が豊富で、便通改善に役立ちます。ペースト状にしてお粥に混ぜたり、スープに溶かしたりすると取り入れやすいです。
④ 改善しなければ:綿棒浣腸
小児科でも一般的に指導される方法です。自宅でできる対処の中では最も効果が確実で、正しく行えば安全性も高い方法です。
用意するもの
- 綿棒(赤ちゃん用の細いもの)
- ベビーオイルまたはオリーブオイル
やり方(安全ポイント重視)
- 綿棒の先端にベビーオイルをたっぷりつける(これが最重要。乾いたまま挿入しない)
- 赤ちゃんを仰向けに寝かせ、おむつを外す
- 肛門に対してまっすぐ、1〜1.5cm程度までゆっくり挿入する
- やさしく円を描くように5〜10秒ほど刺激する
- 静かに抜いて、そのまま待つ
👉 数分以内に排便することが多いです。おむつを外したまま待つか、おむつを当てておくと後処理が楽です。
注意点(ここ重要)
- 深く入れない(最大1.5cm。それ以上は不要で粘膜を傷つけるリスクがある)
- 強くこすらない(軽い刺激で十分)
- 毎日やり続けない(腸が自力で動く力を育てるために、症状があるときのみ使う)
- 血が出た場合はすぐに中止し受診する
👉 「癖になる」というより、「依存しすぎない」ことが大切です。あくまで腸が詰まっているときの一時的なサポートとして使いましょう。
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すぐ受診すべきサイン(重要)
多くの赤ちゃんの便秘は家庭でのケアで改善しますが、以下のサインがある場合は様子見せず、かかりつけ医に相談してください。
- 1週間以上排便がなく、機嫌不良・腹部膨満がある
- 血便が出た(肛門裂傷・腸重積など)
- 嘔吐を伴う(特に胆汁性の緑色の嘔吐は要注意)
- 発熱を伴っている
- 体重が増えていない(新生児期・乳児期初期)
- 綿棒浣腸をしても全く出ない状態が続く
これらは単純な便秘ではなく、別の疾患が隠れているサインである可能性があります。「様子を見てもよい便秘」と「見逃してはいけない状態」を区別することが、医師としても最も伝えたいポイントです。

見逃してはいけない疾患
特に注意すべきは、
ヒルシュスプルング病
腸の神経節細胞が先天的に欠損しており、腸の一部が正常に動かない疾患です。
- 生まれてすぐから便が出にくい・出るのに時間がかかる
- 腹部膨満が強い
- 浣腸で大量の便や水様便が出ることがある
👉 「生まれたときからずっとおかしい」は必ず精査をしてもらいましょう。
よくある便秘との違いは、「生まれた直後から排便に問題がある」「普通のケアで全く改善しない」「腹部膨満が著しい」といった点です。頻度としては稀ですが、見逃すと重症化するため、気になる場合は早めに小児科を受診してください。
腸重積
腸の一部が隣接する腸の中に入り込んでしまう疾患で、腸が詰まった状態(腸閉塞)になります。生後3ヶ月〜2歳に多く見られます。
- 突然の激しい腹痛(泣き叫ぶ→落ち着く→また泣くを繰り返す)
- 嘔吐を伴うことが多い
- 血便(イチゴジャムのような赤黒い便)が出ることがある
- 次第にぐったりしてくる
👉 「腹痛が繰り返す波状パターン+嘔吐」は腸重積を疑うサインです。
便秘と間違えやすいのは「排便がない・お腹を気にしてぐずる」という初期症状が似ているためです。しかし腸重積は時間が経つほど腸が壊死するリスクがあり、発症から数時間以内の処置が重要です。いつもと違う泣き方・繰り返す嘔吐があればすぐに救急受診してください。
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
甲状腺ホルモンの分泌が先天的に低下している疾患です。日本では新生児マス・スクリーニング(生後数日で行う血液検査)によって早期発見される体制が整っていますが、便秘はその症状の一つとして現れます。
- 便秘・哺乳不良・活気のなさ
- 黄疸が長引く
- 筋肉の緊張が低い(ぐにゃぐにゃしている)
- 泣き声が弱い・低い
👉 便秘単体ではなく「全体的に元気がない・発育が遅い」と感じるときは甲状腺疾患も念頭に。
新生児スクリーニングで発見されることがほとんどですが、軽症例では見逃されるケースも稀にあります。「便秘+なんとなく元気がない」「体重が増えにくい」が重なる場合は、かかりつけ医に相談しておくと安心です。
離乳食でできる予防
離乳食が始まった赤ちゃんには、食事の内容で便秘を予防・改善することができます。特定の食材に頼りすぎず、バランスよく取り入れることが大切です。
便秘改善に有効な食材
- プルーン・りんご:ペクチン(水溶性食物繊維)・ソルビトールが豊富。ペーストや果汁で取り入れやすい
- さつまいも・かぼちゃ:食物繊維が多く、腸に優しい。お粥に混ぜてもよい
- ヨーグルト(中期以降):乳酸菌で腸内環境を整える。無糖のプレーンを少量から
- 水分全般:白湯・だし汁・スープなどで水分量を確保する
悪化しやすいもの・注意が必要なもの
- 熟していないバナナ:タンニンを多く含み、便を硬くすることがある(完熟なら問題なし)
- 鉄強化食品の過剰摂取:鉄は必須栄養素だが、過剰になると便が硬くなることも
👉 「良い食材を増やす」より「バランスを整える」という視点が重要です。便秘対策の食材を一度に大量に与えるのではなく、日々の食事の中にバランスよく取り入れましょう。
👉 離乳食初期の栄養については、こちらの記事も合わせてどうぞ:「離乳食、何から始めればいい?」と迷っている方へ|離乳食初期の栄養を医師が解説
まとめ
赤ちゃんの便秘は、正しく理解すれば過度に心配する必要はありません。迷ったときはこの順番で対処してください。
- ✔ 日数ではなく「苦しさ・硬さ」で判断する
- ✔ まずはマッサージ+足の運動から始める
- ✔ 離乳食期は水分と食事内容を調整する
- ✔ 改善しなければ綿棒浣腸(正しく・症状があるときだけ)
- ✔ 異常サインがあれば迷わず受診
医師として一言
赤ちゃんの便秘は「よくある」一方で、親にとっては非常にストレスの大きい問題です。うんちが出るたびに苦しそうな様子を見ていると、こちらまで辛くなりますよね。私自身も0歳の子どもを育てる中で、同じ場面に何度か直面しました。
ただし実際には、
👉 ほとんどが一時的で、適切なケアで改善します。
大切なのは「様子見でいい便秘」と「見逃してはいけない便秘」を区別することです。この記事がその判断の軸になれば幸いです。
執筆:Dr.はると(呼吸器内科専門医・0歳児の父)
医師×資産形成×育児をテーマに発信中
※本記事は一般的な情報提供です。個別の判断は医療機関へご相談ください。
