子育て中の勤務医が実践する仕事と育児の両立|育休・時間管理・パートナー分担のリアル

「当直もあるのに、育児をどうやって回すの?」

「育休を取りたいけれど、医師でも本当に取れるの?」

「子どもが生まれてから、仕事のパフォーマンスが落ちた気がする……」

「パートナーとの家事・育児の分担で、毎日のように揉めている」

子育て中の勤務医なら、こうした悩みを一度は抱えたことがあるのではないでしょうか。

私は呼吸器内科医であり、子育て中の父でもあります。医師として患者さんに向き合いながら、同時に親として子どもに向き合う毎日の中で、「仕事と育児の両立」は単なる時間管理の問題ではないと実感しています。

勤務医の仕事は、当直・オンコール・急変対応・学会・論文・後輩の指導など、「ここまでやれば終わり」という境界線が見えにくい仕事です。

一方、子どもは待ってくれません。

朝になって突然発熱することもあります。保育園から「お迎えに来てください」と電話がかかってくることもあります。大切な学会発表の日に子どもの体調が悪くなることだってあります。

つまり、勤務医と育児の両立が難しいのは、単純に「時間の使い方が下手だから」ではありません。

医師という仕事そのものが持つ予測不能性と、育児という予測不能な生活が重なっていることが大きな理由だと思います。

この記事では、子育て中の勤務医が直面しやすい課題と、私自身が意識していることをまとめます。

「こうすれば必ずうまくいく」という正解を提示する記事ではありません。家庭によって最適解は違います。ただ、同じように仕事と育児の間で悩んでいる医師や医師家庭にとって、少しでも参考になれば幸いです。

なお、育児休業制度や給付金などの法制度については、2026年8月27日時点の情報をもとにしています。制度は変更される可能性があるため、実際に取得・申請する際は勤務先の人事担当者やハローワーク、日本年金機構などの最新情報も確認してください。 


目次

目次

  • 勤務医と育児が難しい理由:仕事の構造的な問題
  • 男性医師も育休を取れるのか
  • 育休中の収入はどうなる?
  • 時間管理の考え方:「量より密度」へ
  • パートナーとの分担:家事・育児を「見える化」する
  • 外部サービスの活用:保育・家事を「外注」する発想
  • キャリアへの影響をどう考えるか
  • 育児期間の資産形成:無理なく続ける
  • バーンアウト予防:「頑張りすぎない」勇気
  • よくある疑問Q&A
  • まとめ

勤務医と育児が難しい理由:仕事の構造的な問題

勤務医と育児の両立が難しい理由を考えると、まず「医師の仕事には時間をコントロールしにくい部分がある」という点が挙げられます。

当直・オンコール

診療科や勤務先によって程度は異なりますが、当直やオンコールは勤務医にとって大きな負担になります。

特に子どもが小さい時期は、夜間に親の一人が不在になることで、残されたパートナーの負担が一気に増えることがあります。

さらに問題なのが、当直そのものだけでなく「当直明け」です。

睡眠が十分に確保できなかった翌日に、通常勤務、家事、育児までこなすのは簡単ではありません。医師自身の疲労や睡眠不足は、仕事のパフォーマンスや安全な医療提供にも関係するため、「根性で乗り切る」ことを前提にしないほうがよいでしょう。

緊急呼び出し・残業の予測不能性

「今日は17時に帰る」と決めていても、急変対応、救急入院、家族への説明、病棟業務などで帰宅が遅くなることがあります。

保育園のお迎えには時間制限がありますから、ここが一般的なデスクワークとの大きな違いです。

大切なのは、「絶対に残業しない」と考えることではなく、残業が発生した場合の代替ルートをあらかじめ作っておくことです。

例えば、夫婦のどちらが迎えに行くのか、祖父母に頼めるのか、ファミリー・サポート・センターやベビーシッターを利用できるのか、病児保育はどこにあるのか。

「その日になって考える」のではなく、平常時に選択肢を複数持っておくことが重要です。

学会・論文・教育活動

勤務医の仕事は診療だけではありません。

  • 専門医・認定医などの資格維持
  • 学会発表
  • 論文執筆
  • 研究
  • 後輩医師の指導
  • 院内勉強会や委員会

こうした業務は重要ですが、育児を始めると「今まで勤務時間外にやっていたこと」がそのまま家庭時間を圧迫します。

そこで、「すべてを以前と同じペースで続ける」のではなく、今の自分にとって本当に重要な活動は何かを一度整理してみることが大切です。

職場の雰囲気・文化

「子どもがいるので早く帰ります」と言いやすい職場もあれば、そうでない職場もあります。

これは病院や診療科によって大きく異なります。

ただ、2024年4月からは、診療に従事する勤務医にも時間外・休日労働の上限規制が適用されています。原則としてA水準では年間960時間が上限となり、地域医療確保などの一定の要件を満たす医療機関ではB・連携B・C水準として年間1,860時間の上限が設定される場合があります。医師の働き方改革には追加的健康確保措置も設けられています。

もちろん、制度ができたからといって、すべての病院で働き方が急に変わるわけではありません。しかし、「医師だから何時間でも働く」という時代からは、少しずつ変化していると考えてよいでしょう。


男性医師も育休を取れるのか

結論から言えば、男性医師も、一定の要件を満たせば育児休業を取得できます。

「育休は女性が取るもの」「医師は忙しいから育休は無理」というのは、少なくとも法律上のルールではありません。

育児休業の基本的な仕組み

育児・介護休業法では、一定の要件を満たす労働者が育児休業を取得できる制度が設けられています。

通常の育児休業は、原則として子どもが1歳になるまで取得できます。一定の要件を満たす場合には、1歳6か月、さらに2歳まで延長できる仕組みがあります。

また、2022年10月からは、男女とも原則2回まで育児休業を分割して取得できるようになっています。

産後パパ育休(出生時育児休業)

男性にとって特に知っておきたいのが「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。

これは、子どもの出生後8週間以内に、通算28日まで取得できる制度です。原則2回に分割して取得できます。

「1か月単位の長期育休は職場的に難しい」という医師でも、出産直後の一定期間だけ取得するという選択肢があります。

私自身も、育児休業を考える際には「長期間休むか、まったく休まないか」という二択ではなく、家庭と職場の状況に合わせて、どの期間を休むと最も家族の助けになるかを考えることが重要だと思っています。

男性の育休取得は珍しいのか

男性の育児休業取得率そのものは、近年大きく上昇しています。

厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査では、2025年度の男性の育児休業取得率は50.9%とされています。一方で、これは医師に限定した統計ではありません。医師の場合は勤務先、診療科、当直体制などによって事情が大きく異なるため、「医師の半分が育休を取っている」と単純に考えることはできません。

医師が育休を取るときの現実的な課題

制度上は取得できても、現場では次のような問題があります。

  • 自分が抜けることで診療体制に穴が開く
  • 代替医師の確保が必要になる
  • 上司や同僚に負担をかけるのではないかと心配になる
  • 学会や研究の予定と重なる
  • 復帰後の当直・担当業務がどうなるのか不安

これらは「育休を取るべきではない」という理由ではありません。

むしろ、早めに相談して、引き継ぎを含めて職場と調整することが重要です。

育休取得を理由とする解雇、降格、減給などの不利益な取り扱いは法律上禁止されています。一方で、実際の勤務体制やキャリア形成への影響については職場によって異なるため、育休前に復帰後の働き方について話し合っておくと安心です。 


育休中の収入はどうなる?

育休を考えるうえで、避けて通れないのがお金の問題です。

勤務医の場合、普段の給与が比較的高いだけに、「育休を取ったら収入がほとんどなくなるのでは?」と心配になる方もいるでしょう。

育児休業給付金の基本

雇用保険の被保険者が一定の要件を満たして育児休業を取得した場合、育児休業給付金が支給されます。

  • 育休開始から180日間:休業開始時賃金の67%相当
  • 181日目以降:休業開始時賃金の50%相当

ただし、これは「普段の給与の67%・50%がそのまま振り込まれる」という意味ではありません。給付には上限額があり、計算の基礎となる賃金にも上限があります。

高収入の勤務医ほど、実際の給与に対する給付割合は小さくなりやすい点には注意が必要です。

2025年4月から「出生後休業支援給付金」も登場

ここは、現在の育休制度を考えるうえで非常に重要なポイントです。

2025年4月から「出生後休業支援給付金」が創設されました。

一定の要件を満たし、子どもの出生直後の一定期間に本人と配偶者の双方がそれぞれ14日以上育児休業を取得するなどの条件を満たした場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が上乗せされます。

通常の育児休業給付67%と合わせると80%相当となり、社会保険料免除や給付が非課税であることなどを考慮すると、厚生労働省は「手取り10割相当」と説明しています。

ただし、ここにも給付上限があり、誰でも給与の手取りが完全に100%になるわけではありません。

特に共働き家庭で育休を取る場合は、ぜひ一度確認しておきたい制度です。

社会保険料はどうなる?

育児休業期間中は、一定の要件を満たして勤務先が手続きを行うことで、健康保険・厚生年金保険料が免除されます。

ただし、「育休を1日取れば、その月の社会保険料が必ず免除される」という単純な仕組みではありません。月末を含むか、同月内の休業期間が14日以上か、賞与にかかる保険料かなどによって取り扱いが異なります。

特に賞与の社会保険料免除には別の要件があるため、ボーナスのある勤務医は注意が必要です。

育児時短就業給付金も知っておきたい

2025年4月からは「育児時短就業給付金」も創設されました。

2歳未満の子を養育するために一定の要件を満たして時短勤務を行った場合、原則として時短勤務中に支払われた賃金の10%相当額が給付されます。

育休を取得した後に「フルタイム復帰は厳しいので、しばらく時短勤務にする」という医師にとっても、知っておいて損のない制度です。

育休中の資産形成はどうする?

育休中は収入が減るため、投資額を一時的に減らすこと自体はまったく問題ありません。

むしろ、育児休業中に無理をして投資を続け、生活費が足りなくなって現金を取り崩すようでは本末転倒です。

一方で、NISAについては「積立を止めたら非課税枠を永久に失う」という制度ではありません。

現在のNISAは年間最大360万円、非課税保有限度額は1,800万円で、売却した場合には翌年以降に取得価額分の枠を再利用できます。ただし、その年に使わなかった投資枠を翌年に繰り越すことはできません。

したがって、育休中は「絶対に積立を続ける」より、「家計に余裕がある範囲で無理なく続ける」という考え方がおすすめです。


時間管理の考え方:「量より密度」へ

子どもが生まれると、仕事に使える時間は確実に減ります。

ここで「以前と同じ量の仕事をこなそう」とすると、睡眠時間を削るか、家族との時間を削るか、自分の休息を削ることになりがちです。

そこで意識したいのが、「時間の量」ではなく「時間の使い方」を見直すことです。

「全部やる」をやめる

育児期間には、「やらないことを決める」ことが重要です。

  • 惰性で参加している会議
  • 自分でなくてもできる仕事
  • 必要以上に時間をかけている書類作成
  • 優先順位の低い勉強会
  • 完璧を目指しすぎている作業

こうしたものを一度洗い出してみます。

もちろん、医療安全や患者さんへの説明など、削ってはいけない仕事もあります。

大切なのは「何でも効率化する」ことではなく、重要度の低い仕事に使っていた時間を、家族や睡眠など本当に重要なものへ振り替えることです。

隙間時間は便利。でも「隙間時間まで仕事」にしない

メールの返信、論文のタイトル確認、学会資料のチェックなどは、5〜15分程度の時間でも進められます。

子どもの昼寝中や通勤時間などを利用できる場合もあります。

ただし、「5分空いたから仕事をしなければ」と考え始めると、家にいる間も常に仕事モードになってしまいます。

隙間時間は「使えるときに使う」程度にして、休む時間も意識的に残すことが大切です。

当直明けは「頑張らない日」にする

当直明けは、普段より疲労が強いことを前提に予定を組みます。

可能なら育児負担をパートナーと調整し、睡眠・休息を確保する。

当直明けにさらに研究や副業、家事まで詰め込むと、短期的には頑張れても長期的には続きません。

「休むことも予定に入れる」くらいでちょうどいいと思います。


パートナーとの分担:家事・育児を「見える化」する

仕事と育児の両立において、個人的には最も重要なのが「夫婦間の調整」だと思っています。

「家事・育児の分担」ではなく「家庭の運営」を考える

夫婦で揉めやすいのが、「自分はこれだけやっている」「相手は何もしていない」という感覚です。

しかし、家事・育児は単純に作業量だけでは比較できません。

  • 保育園の送り迎え
  • 食事の準備
  • 洗濯
  • 掃除
  • 子どもの着替え
  • 予防接種や健診の予約
  • 保育園からの連絡への対応
  • 子どもの体調管理
  • 日用品の在庫管理

このような「見えにくい仕事」も家庭を維持するためには必要です。

そこで、一度すべて書き出してみると、「思っていたより仕事が多い」と気づくことがあります。

「誰がやるか」だけでなく「誰が責任を持つか」

例えば「保育園関連は妻が担当」と決めた場合、妻がすべてを背負うのではなく、夫も保育園の予定や必要書類を把握しておく。

逆に「休日の食事は夫が担当」と決めたなら、献立を考えるところから買い物、調理、片付けまで一つの仕事として担当する。

こうした「タスクの所有者を決める」考え方は、夫婦間の「言われないとやらない問題」を減らすのに役立ちます。

「当然こうだろう」という思い込みが危ない

「医師だから仕事優先でいい」

「育児はパートナーが中心にやるもの」

「自分のほうが収入が高いから、家事は相手が多くて当然」

こうした思い込みは、夫婦関係を悪化させる原因になり得ます。

もちろん、家庭によっては収入や勤務時間の違いから、実質的な分担に偏りが生じることもあります。

重要なのは、50:50にすることではなく、夫婦双方が納得できる状態をつくることです。

定期的に「今の分担で大丈夫?」と確認する

子どもの月齢が変われば、必要な育児量も変わります。

夫婦の勤務状況も変わります。

そのため、出産前に決めた分担をずっと続ける必要はありません。

月1回でも、「最近どう?」「何が一番大変?」「今の分担を変えたほうがいい?」と確認するだけで、問題が大きくなる前に修正しやすくなります。

「ありがとう」を言葉にする

家事や育児は、やっている側からすると「これだけやっているのに」と感じやすく、やってもらっている側からすると「いつものこと」と感じやすいものです。

だからこそ、「ありがとう」を言葉にする。

非常に単純ですが、私は大切なことだと思っています。

患者さんや同僚には丁寧に感謝を伝えているのに、家では無言になっている……ということがないようにしたいものです。


外部サービスの活用:保育・家事を「外注」する発想

共働き医師家庭では、「すべて自分たちでやる」という考え方には限界があります。

育児や家事を外部にお願いすることは、決して手抜きではありません。

家族が長く安定して生活するための「環境整備」と考えてよいと思います。

認可保育所・認定こども園など

保育所等の利用については、自治体が定める「保育の必要性」や利用調整の仕組みに基づいて決まります。

「医師だから必ず優先される」という制度ではなく、具体的な指数や基準は自治体によって異なります。

そのため、妊娠中から自治体の制度や募集時期を確認しておくことが重要です。

病児保育・病後児保育

子どもが発熱すると、保育園に登園できなくなることがあります。

特に夫婦ともに勤務していたり、当直・オンコールがあったりすると、ここが大きな問題になります。

地域によっては病児・病後児保育がありますが、定員や利用条件、予約方法などは自治体・施設によって異なります。

重要なのは、「子どもが病気になったらどうする?」を元気なうちに夫婦で決めておくことです。

ファミリー・サポート・センターやベビーシッター

ファミリー・サポート・センターや民間のベビーシッターを利用できる地域もあります。

例えば、

  • 保育園への送迎
  • 勤務終了後のお迎え
  • 夫婦ともに帰宅が遅くなる日のサポート

など、家庭だけでは対応しにくい部分を補ってもらうことができます。

ただし、サービス内容や利用可能時間、料金、病児対応の可否などはサービスごとに異なります。

家事代行

掃除、料理、洗濯などの一部を家事代行サービスにお願いする方法もあります。

医師家庭の場合、「自分でやればお金はかからない」と考えがちですが、実際にはその時間を仕事、睡眠、家族との時間に使うことができます。

もちろん費用とのバランスは必要ですが、「時間を買う」という考え方は、忙しい子育て世代と相性がよいと思います。


キャリアへの影響をどう考えるか

「育児をしながらでは、キャリアが遅れるのではないか」

これは医師にとってかなり大きな不安だと思います。

育休・時短によってキャリアに影響が出る可能性はある

ここは、きれいごとだけでは語れません。

育休や時短勤務によって、

  • 論文執筆の時間が減る
  • 学会発表の機会が減る
  • 症例経験が減る
  • 手技を経験する機会が減る
  • 院内での役割が変わる

といったことが起こる可能性はあります。

特に、専門医取得や特定の技能習得など、一定期間に経験を積む必要があるキャリアでは、育児との調整が重要になります。

したがって、「育休を取ってもキャリアには絶対に何の影響もありません」と言うのは現実的ではありません。

それでも、キャリア全体で考える

一方、医師のキャリアは非常に長いものです。

30代の数年間に育児へ時間を割いたとしても、その後も医師として何十年も働くことになります。

もちろん、専門分野によっては数年のブランクが大きな意味を持つ場合もあります。それでも、短期的な遅れだけで「キャリアが終わる」と考える必要はありません。

むしろ、育児期間に無理を重ねて心身ともに疲弊し、医師として働き続けること自体が難しくなってしまうほうが、長期的には大きな問題になる可能性があります。

育児経験が医師としてプラスになることもある

子育てを経験すると、患者さんの家族を見る視点が少し変わることがあります。

特に小児ではなくても、患者さんの家族が抱える不安や、「家族としてどう支えればいいのか分からない」という感覚を以前より身近に感じることがあります。

もちろん、育児経験があるから患者家族を理解できる、という単純な話ではありません。

それでも、医師としての人生と親としての人生は、必ずしも別々ではないと私は考えています。


育児期間の資産形成:無理なく続ける

子育てが始まると、生活費だけでなく、ベビー用品、保育費、医療費、住居費、将来の教育費など、さまざまな支出が増えていきます。

さらに育休中は収入が減ることがあります。

この時期に大切なのは、投資額を維持することではなく、家計を壊さずに資産形成を続けることです。

「積立額を減らす=失敗」ではない

例えば、毎月10万円投資していた家庭が、育休中だけ5万円に減らす。

これは資産形成の失敗ではありません。

収入や支出が変化したら、投資額を変えるのは自然なことです。

NISAは長期的な資産形成に活用できる制度ですが、「毎月必ず同じ金額を積み立てなければならない制度」ではありません。

家計に余裕があるなら継続する。余裕がなければ減額する。

生活を守ったうえで投資をするという順番を忘れないことが大切です。

生活防衛資金を優先する

投資を始める前、あるいは投資を継続するうえで、ある程度の現金を確保しておくことは重要です。

「生活費の3〜6か月分」という数字がよく使われますが、これは法律や公的機関が定めた絶対的な基準ではありません。

子育て世帯では、住宅ローンの有無、共働きかどうか、親からの支援があるか、医師としての収入の安定性などによって必要な現金額は変わります。

重要なのは、急な休職・収入減・大型出費があっても、株式などのリスク資産を慌てて売却せずに済む程度の現金を持っておくことです。

教育費と老後資金を分けて考える

子どもが生まれると、「将来の教育費をどう準備するか」が気になります。

学資保険、預貯金、投資など、選択肢はいくつかあります。

ただし、教育費だけを優先して老後資金が不足するのも問題です。

教育費については、奨学金などの選択肢がありますが、老後になってから老後資金を借りることは容易ではありません。

そのため、教育費・住宅・老後・現在の生活費を一つの家計として考えることが重要です。


バーンアウト予防:「頑張りすぎない」勇気

医師のバーンアウトは、個人の性格だけではなく、長時間労働、仕事の負荷、職場環境などさまざまな要因が関係する問題です。

育児期間は、仕事に加えて家庭での負担も増えるため、心身の余裕を失いやすい時期です。

こんな状態が続いたら要注意

  • 以前は苦にならなかった仕事が強い負担に感じる
  • 慢性的な疲労感が続いている
  • 患者さんや同僚に対してイライラすることが増えた
  • 仕事への意欲が著しく低下した
  • 睡眠や食欲などの生活リズムが大きく崩れている
  • 「もう限界だ」と感じる状態が続いている

こうした状態が続く場合、「自分が弱い」と考えるのではなく、休養や勤務調整、産業医・上司・専門家への相談を検討することが大切です。

「助けを求める」のは弱さではない

医師は、患者さんから相談を受ける側です。

そのため、自分が困っているときに「助けてください」と言うことに抵抗を感じる人もいるでしょう。

しかし、医師自身が疲弊してしまえば、患者さんに提供する医療にも影響する可能性があります。

自分の健康を守ることは、結果的に患者さんや家族を守ることにもつながります。

「完璧な親医師」は存在しない

仕事も完璧。

育児も完璧。

家事も完璧。

資産形成も完璧。

これを同時に実現するのは、ほとんど不可能です。

子どもが小さい時期は、「今日は仕事を優先したから家事ができなかった」「子どものために休んだから論文が進まなかった」ということが必ず起こります。

それを「失敗」と考えるのではなく、「今はこれを優先している」と考える。

長い人生で見れば、その時期によって優先順位が変わるのは当然です。


よくある疑問Q&A

Q:医師が育休を取ると、その後のキャリアに不利になる?

一律に「不利になる」「ならない」とは言えません。

育児休業の取得を理由とした解雇、降格、減給などの不利益な取り扱いは法律上禁止されています。

一方で、実際の症例経験、当直、研究、役職などについては、育休取得期間や職場の体制によって変化する可能性があります。

育休取得前に、「復帰後はどのような勤務になる予定か」「当直はどうなるか」「研究・専門医取得への影響はあるか」などを上司と確認しておくとよいでしょう。

Q:共働き医師夫婦の場合、どちらが育休を取るべき?

正解はありません。

収入、勤務時間、当直、キャリアのタイミング、本人の希望などを総合的に考える必要があります。

また、「夫が1か月、妻が1年間」のように、夫婦で期間を分けることもできます。

さらに、制度上は夫婦がそれぞれ育児休業を取得することも可能です。

「どちらが休むか」ではなく、「家庭全体としてどうすれば無理が少ないか」という視点で考えるのがおすすめです。

Q:子どもが病気のときの仕事はどうする?

まず、夫婦間で「子どもが発熱した場合、誰が対応するか」を決めておきましょう。

さらに、2025年4月から「子の看護等休暇」は対象年齢が小学校3年生修了までに拡大され、取得事由も、病気・けがの看護だけでなく、予防接種・健康診断、感染症による学級閉鎖等への対応、入園式・卒園式・入学式への参加などに広がっています。

取得できる日数は、子ども1人の場合は1年度につき5日、2人以上の場合は10日です。時間単位で取得できる場合もあります。

ただし、休暇中の賃金が支払われるかどうかは勤務先の規定によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

病児保育、ファミリー・サポート・センター、ベビーシッター、祖父母なども含め、「一つの方法がダメでも次の方法がある」という状態を作っておくことが大切です。

Q:子どもが生まれてから仕事のパフォーマンスが落ちた気がするけれど、大丈夫?

育児初期は、夜間の中途覚醒や生活リズムの変化によって睡眠時間が不足しやすくなります。

睡眠不足は、注意力や認知機能などに影響することが知られています。

したがって、「以前と同じように働けない=能力が落ちた」と決めつける必要はありません。

むしろ、睡眠不足の時期には、重要な判断や確認をいつも以上に慎重にする、可能ならダブルチェックを活用するなど、ミスを個人の根性で防ぐのではなく、仕組みで減らすことが重要です。

なお、「1歳半〜2歳になれば必ず改善する」といった一律の目安はありません。子どもの睡眠や家庭環境には個人差が大きいため、年齢だけで判断しないようにしましょう。

Q:親としての関わりが少ないことで、子どもに影響が出る?

「親子が一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、必ず子どもにとって良い」という単純な話でもありません。

一方で、「忙しくても短時間で十分」と単純化するのも適切ではありません。

子どもの発達には、親子の相互作用、養育の安定性、家庭の安全・安心、子どもの気質など、さまざまな要因が関係します。

だからこそ、勤務時間が長い医師であっても、可能な範囲で子どもと向き合う時間を確保し、その時間には仕事から離れて関わることを意識したいところです。

「何時間一緒にいたか」だけで自分を評価しすぎる必要はありません。


まとめ

子育て中の勤務医が仕事と育児を両立するためのポイントをまとめます。

  • 勤務医と育児の両立が難しいのは構造的な理由がある。「自分の要領が悪い」とだけ考えない
  • 男性医師も一定の要件を満たせば育休を取得できる
  • 産後パパ育休は出生後8週間以内に通算28日まで取得できる
  • 育児休業給付金は原則67%、181日目以降は50%だが、給付には上限がある
  • 出生後休業支援給付金(2025年4月〜)など、新設された給付も確認する
  • 育児時短就業給付金(2025年4月〜)は2歳未満の子を養育しながら時短勤務する場合に活用できる
  • 社会保険料免除には条件がある。特に賞与については注意する
  • 時間管理は「全部やる」から「重要なものを残す」へ
  • 夫婦の家事・育児は「見える化」し、定期的に分担を見直す
  • 病児保育・家事代行・ベビーシッターなどを必要に応じて活用する
  • 子の看護等休暇(2025年4月〜)は小学校3年生修了まで対象が拡大、取得事由も広がっている
  • 育休によるキャリアへの影響はゼロとは言えないが、長期的なキャリア全体で考える
  • 資産形成は「投資額を維持する」より「家計を壊さず続ける」ことを優先する
  • バーンアウトの兆候があれば、早めに休む・相談する
  • 完璧な親医師を目指さない

仕事と育児の両立に「正解」はありません。

夫婦の勤務状況、子どもの性格、職場環境、経済状況、祖父母などのサポート体制によって、最適な方法は大きく変わります。

だからこそ大切なのは、最初から完璧な仕組みを作ることではなく、「今のやり方で家族みんなが無理なく続けられているか」を定期的に確認することだと思います。

子どもが小さい時期は、仕事のペースを落とさざるを得ないことがあります。

それは「キャリアを諦める」ということではありません。

逆に、仕事だけを優先して家族や自分自身が疲弊してしまえば、それも長期的には大きな損失です。

医師として長く働き続けるために。

そして、親として子どもの成長をできるだけ近くで見守るために。

「仕事か育児か」の二択ではなく、その時々で家族にとって最適なバランスを探していく。

それが、子育て中の勤務医にとって現実的な「両立」なのではないかと私は考えています。


執筆:Dr.はると(呼吸器内科専門医・子育て中の父)
医師×資産形成×育児をテーマに発信中

※本記事は2026年8月27日時点の情報をもとに作成しています。育児休業制度、給付金、社会保険制度、税制等は変更される可能性があります。個別の取得・申請については、勤務先の人事担当、ハローワーク、日本年金機構などの最新情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

Dr.はるとのアバター Dr.はると 呼吸器内科専門医

Dr.はると|呼吸器内科専門医・0歳児パパ
医師として働きながら、資産形成・育児の両立に取り組んでいます。
「医師目線のリアルな情報」を届けるべく、資産形成・育児・医療知識のテーマで発信中。
「難しい情報をわかりやすく」をモットーに、忙しい医師・子育て中の親御さんに役立つ記事を書いています。

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