「年収はそれなりにあるのに、なぜかお金が残らない」
勤務医として働いていると、多くの人が一度は感じる違和感です。源泉徴収票を見るたびに、
- 「こんなに引かれているのか」
- 「思ったより手取りが少ない」
と感じるのは自然な反応です。
これは単なる感覚ではなく、税制と社会保険の構造による必然です。
この記事では、勤務医の税負担を
- 計算の流れ
- 制度の構造
- 実際のインパクト
の3つの視点から、わかりやすく解説します。

税金は「収入」ではなく「課税所得」にかかる
まず最初に、最も重要な前提です。
勤務医の給与から差し引かれるものは主に3つあります。
- 社会保険料(健康保険・厚生年金など)
- 所得税(国税)
- 住民税(地方税)
ここで大事なのは、
👉 税金は「額面年収」にはかからない
👉 「課税所得」に対してかかる
という点です。
▶ よくある誤解
「年収1,200万円なら33%くらい税金がかかる」
これは半分正しくて、半分間違いです。
実際には、
👉 控除を引いた後の金額に
👉 段階的に税率がかかる
仕組みになっています。
課税所得の計算の流れ(全体像)
ここを理解すれば、税金の8割は理解できたも同然です。

▶ イメージで理解する
税金の計算は、
👉 「削れるだけ削って、残った部分に税金をかける」
という構造です。
つまり、
- 控除が多い人 → 税金が軽い
- 控除が少ない人 → 税金が重い
非常にシンプルなロジックです。
① 給与所得控除:勤務医が不利になるポイント
給与所得控除は、「サラリーマンの経費」として扱われる制度です。しかしここに大きな特徴があります。
👉 年収850万円を超えると195万円で頭打ち
▶ これが何を意味するか?
例えば、
- 年収900万円の医師
- 年収1,500万円の医師
どちらも
👉 控除は同じ195万円
▶ 直感的に言うと
👉 「それ以上は経費なしで稼いでる扱い」
になるということです。
これが、
👉 勤務医の税負担が急に重く感じる理由
です。

② 各種控除:ここが”コントロールできる領域”
給与所得からさらに引けるのが各種控除です。主なものは以下です。
- 社会保険料控除(最も大きい)
- 基礎控除(所得税48万円/住民税43万円)
- 配偶者控除・扶養控除
- 生命保険料控除
- iDeCo(掛金全額控除)
- 医療費控除
- 寄附金控除(ふるさと納税)
▶ 医師にとって重要な視点
勤務医は、
👉 ここしか調整できない
と言っても過言ではありません。
個人事業主のように
- 経費を増やす
- 利益を調整する
といったことができないため、
👉 控除=唯一の節税レバー
になります。

所得税の仕組み:累進課税を正しく理解する
所得税は累進課税です。つまり、
👉 所得が増えるほど税率が上がる
▶ 重要ポイント
ただし、
👉 全額に高い税率がかかるわけではない
という点が非常に重要です。
例えば課税所得900万円の場合:
- 195万円までは5%
- それを超えた部分に10%、20%、23%…と積み上がります
▶ さらに上乗せされる税
👉 復興特別所得税(2.1%) ※2037年まで
住民税:地味に効いてくる固定10%
住民税はシンプルです。
- 所得割:10%
- 均等割:約6,000円前後
▶ しかし本当に重要なのはここ
👉 前年所得に対して課税される
▶ 医師あるある
- 転職後に税金が重く感じる
- 育休後に手取りが減る
これはすべて、
👉 時間差課税の影響
です。
【具体例】年収1,200万円のリアル
ざっくり試算すると、
- 年収:1,200万円
- 課税所得:約800万円
👉 税金
- 所得税:約120万円
- 住民税:約80万円
👉 合計:約200万円
▶ さらに重要な事実
👉 社会保険料:約160万円
▶ 結論
👉 「税金+社会保険」で約360万円
つまり、
👉 年収の約30%が固定で引かれる
なぜ「手取りが増えない」と感じるのか
ここが本質です。理由は4つあります。
① 控除が増えない
→ 給与所得控除が頭打ち
② 税率が上がる
→ 累進課税
③ 住民税の遅延課税
→ 翌年に重くのしかかる
④ 経費が使えない
→ ここが最大の差
▶ 個人事業主との違い
例えば個人事業主は、
- 家賃
- 車
- 書籍
- 交際費
などを経費化できます。一方勤務医は、
👉 ほぼゼロ
▶ 本音を言うと
税制上の有利さで言えば、
👉 開業医は勤務医より圧倒的に有利
です。
クリニックの家賃・人件費・医療機器・車・書籍など、業務にかかる費用を経費として計上できるため、課税所得を大幅に圧縮できます。これは勤務医には原則できません。
ただし、開業にはリスクと準備が伴います。
👉 「今すぐ開業できない」勤務医でも使える節税手段は確実に存在します。
以下はその現実的な選択肢です。

合法的に税負担を下げる方法
現実的に有効なものだけ厳選します。
① ふるさと納税
- 実質2,000円負担
- 住民税+所得税軽減
② iDeCo
- 掛金全額控除
- 高所得ほど有利
③ 医療費控除
- 家族合算OK
- 出産・歯科で使いやすい
④ 住宅ローン控除
- 税額控除(効果大)
- 所得控除より強力

医師×資産形成としての本質
税金の問題は、
👉 努力では解決できない領域
です。
しかし、
👉 理解すれば最適化は可能
▶ 重要な考え方
- 税率ではなく「限界税率」で考える
- 控除は”投資”と捉える
- 長期で最適化する
まとめ
- ✔ 税金は「課税所得」にかかる
- ✔ 勤務医は給与所得控除が頭打ち
- ✔ 累進課税+住民税で負担増
- ✔ 節税は「控除」がすべて
- ✔ 本質は「構造の理解」
最後に
勤務医は忙しく、税金について深く考える時間が取りにくい職種です。
しかし、
👉 年間数十万円単位で差が出る分野
でもあります。
税制は変えられませんが、
👉 使い方は選べます
まずは仕組みを理解することが、資産形成の第一歩です。
執筆:Dr.はると(呼吸器内科医・29歳・0歳児パパ)
医師×資産形成×育児をテーマに発信中
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務に関する個別の判断は、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
