医師がNISAを始めるべき理由を論理的に解説【勤務医向け】

医師がNISAを始めるべき理由を論理的に解説|専攻医・勤務医向け

「NISAは知っている。でも、まだ始めていない」

医師の周りを見渡すと、この状態の人が驚くほど多いです。私自身もそうでした。

収入はある。勉強も苦ではない。それなのに、お金のことだけは後回しになる。

なぜでしょうか。理由はいくつか考えられます。「今の仕事に精一杯で、投資を勉強する余裕がない」「リスクがあるものに手を出すのが怖い」「どうせやるなら完璧に理解してから始めたい」。これらはすべて、医師という職業柄ゆえの「完璧主義」「慎重さ」から来ていると思います。

しかし、その慎重さが、資産形成においては最大のリスクになっています。

この記事では、「なぜ医師こそNISAを今すぐ始めるべきなのか」を、医師特有の事情も踏まえて論理的に解説します。感情論ではなく、「構造」と「数字」で納得できる内容にしています。

読み終えたときに、「とりあえず始めるか」と思えたなら十分です。


目次

そもそもNISAとは何か(3分で理解)

NISAはシンプルに言うと、「投資の利益に税金がかからない制度」です。

通常、株式や投資信託の利益には約20%の税金がかかります。例えば100万円の利益 → 約20万円が税金として持っていかれる計算です。

NISAを使うと、この20万円がそのまま手元に残ります。

「たった20%でしょ?」と思うかもしれませんが、長期運用になると話が変わります。10年・20年と複利で増え続ける資産に対してこの税金が積み重なると、最終的な差は数百万円単位になります。これについては後ほど具体的な数字で示します。

NISAは2014年にスタートした制度ですが、2024年から「新NISA」として大幅に拡充されました。旧NISAと比べて、非課税枠が大幅に増え、期間も無期限になったことで、長期投資に非常に適した制度になっています。

2024年からの新NISAのポイントは以下です。

  • 年間投資上限:360万円(つみたて120万円+成長240万円)
  • 生涯非課税枠:1,800万円
  • 非課税期間:無期限

「つみたて投資枠」は毎月コツコツ積み立てるのに向いており、インデックスファンドなどが対象です。「成長投資枠」は個別株や一部のアクティブファンドも対象で、より積極的な運用が可能です。

ただし、ここで重要なのは制度の細かい理解ではなく、「使うか・使わないかで長期的に大きな差がつく」という一点です。難しく考えすぎず、まずは「税金がかからない投資枠がある」くらいの認識で十分です。

NISAと課税口座の比較グラフ


医師こそNISAの優先度が高い4つの理由

ここからが本題です。「NISAが良い制度」というのは多くの人が知っています。しかし、医師という職業には、NISAを特に優先すべき固有の理由があります。一つずつ見ていきましょう。

① 勤務医には「退職金バフ」がない

一般企業では、退職金2,000〜3,000万円は珍しくありません。大企業の場合、それ以上になるケースもあります。多くのサラリーマンは「退職金があるから、老後はなんとかなる」という前提で生きています。

一方で勤務医は、退職金が少ない・そもそも存在しない施設もあるというケースが普通にあります。特に市中病院や医療法人では、退職金制度がほぼ機能していないことも多い。また、医師はキャリアの途中で転職や異動が多いため、退職金が積み上がりにくい構造でもあります。

つまり、「老後資金は自分で作る前提」で考える必要があります。

さらに、医師は「生涯現役」と言われますが、これは裏を返せば働き続けることを前提にしないと成立しない構造でもあります。

  • 体力の低下
  • 自身の病気
  • 家族の事情

これらで働けなくなる可能性は、当然ゼロではありません。医師も人間です。バーンアウト(燃え尽き症候群)は医療業界では深刻な問題で、特に30代〜40代の中堅医師に多く見られます。外来・病棟・当直をこなしながら、学会・論文・教育もこなし、家庭もある。この過負荷が長年続けば、いつかどこかで限界が来ます。

「働けなくなってから困る」のでは遅い。だからこそ、「働かなくても回る資産」を作る必要がある。その最適な器がNISAです。

また、医師のキャリアには「開業」という選択肢もあります。開業する場合は自営業となり、会社員としての退職金はもちろんゼロ。自己資金と事業収入で老後を賄う必要があります。いずれ開業を考えている方こそ、若いうちからの資産形成が特に重要です。


② 高収入×高税率=非課税の価値が最大化する

医師は高収入である一方、税負担も非常に重いです。

  • 所得税:最大45%
  • 住民税:約10%

年収1,500万円の勤務医であれば、手取りは思ったより少なく、1,000万円程度しか残らないケースも珍しくありません。稼いでいるのに手元に残らない、という感覚は多くの勤務医が持っているはずです。

ここに加えて、投資益にも約20%課税されます。

つまり通常口座では、「稼ぐ → 税金で削られる → 投資する → また税金」という二重構造になります。せっかく高収入を活かして投資しようとしても、その利益にまた税金がかかる。これは構造的に損をしています。

NISAはこのうち、「投資で増えた部分の税金」をゼロにする制度です。高収入であるほど投資できる金額が大きくなり、非課税のメリットも大きくなります。

具体例で見てみます(毎月5万円×20年・年利5%で運用した場合)。

課税口座 NISA
元本 1,200万円 1,200万円
運用益 約846万円 約846万円
税金 約169万円 0円
最終資産 約1,877万円 約2,046万円

👉 差額:約170万円

これは投資の腕ではなく、制度を使ったかどうかだけの差です。同じ銘柄を買っても、同じ月に買っても、NISAを使うだけで170万円変わります。

さらに月10万円積み立てられる環境であれば、差はその2倍、約340万円になります。収入が高い医師ほど、この恩恵は大きくなります。

「たかが制度の使い方」と思うかもしれませんが、これは医師が特に重視すべき「構造的優位性」です。同じ努力・同じリスクなのに、制度を知っているだけで数百万円の差がつく。これを活かさない理由はありません。

NISAと課税口座の比較グラフ


③ 若いうちに始めるインパクトが大きすぎる

投資で最も重要なのは「元本」ではなく時間です。これは数学的な事実で、複利の力によるものです。

複利とは「利益が利益を生む」仕組みです。1,000万円が年5%増えると翌年は1,050万円。その1,050万円が5%増えると翌年は1,102.5万円。この「増えた分がさらに増える」効果が長期で積み重なると、加速度的に資産が増えていきます。

同じ月3万円でも、開始時期でここまで変わります。

  • 25歳スタート(40年):約4,560万円
  • 30歳スタート(35年):約3,440万円
  • 35歳スタート(30年):約2,510万円

👉 5年遅れるだけで約1,000万円差

医師のキャリアを考えると、研修医は24歳〜、専攻医は27歳〜が一般的です。この段階から始めることができれば、40年近い運用期間が確保できます。

よくある誤解として「収入が増えてから始める」がありますが、これは逆です。収入が少なくてもいいから、早く始める方が圧倒的に有利。研修医・専攻医こそ、少額でいいのでスタートする価値があります。

「今は月1万円しか捻出できない」という専攻医でも、25歳から始めれば40年後には約1,520万円(年利5%想定)になります。一方、35歳から月3万円積み立てても約2,510万円。月3倍の金額を出しても、10年の差を完全には埋められません。

もう一つよくある誤解は「研修医・専攻医時代は給料が少ないから、無理してNISAしなくていい」というものです。確かに、生活費・学会費・勉強代などで出費は多い。しかし、月1万円でも積み立てを始めることの意味は、お金の額より「習慣を作ること」にあります。

投資は筋トレと同じで、続けることで効果が出ます。若いうちに習慣化しておけば、後で収入が増えたときに積立額を増やすだけで済みます。逆に習慣がない人は、収入が増えても「使い道がたくさんある」ため、結局始めるタイミングを逃し続けます。

積立開始時期による最終資産の差


④ 多忙な医師ほど「仕組み化投資」と相性がいい

医師は基本的に時間がありません。

  • 外来・病棟・当直
  • 学会・論文
  • 家庭との両立

この中で個別株の分析や売買タイミングの判断をやるのは現実的ではありません。個別株投資には企業の決算分析、業界トレンドの把握、マクロ経済の読み解きが必要で、それだけで週に何十時間も費やすプロもいます。医師がその土俵で戦おうとするのは、ただの時間の無駄です。

NISAの積立投資は、一度設定すれば自動積立・ほぼ放置でOKという仕組みです。

具体的には、証券口座を開設し、投資信託(インデックスファンド)を選び、毎月の積立額と引き落とし日を設定する。これだけです。設定後は毎月自動的に購入が行われ、基本的にやることはありません。当直明けで疲弊していても、年末年始で忙しくても、積立は淡々と続きます。

👉 時間を使わずに資産形成できる

「限られたリソースで最大効率を出す」という医師の思考と非常に相性がいいです。医師は日々の診療でも「エビデンスに基づいた最適解を選ぶ」ことを重視しています。投資においても同じアプローチで、「時間をかけずに最大のリターンが期待できる方法」を選べば良いだけです。その答えが、インデックスファンドの長期積立です。

また、感情的な売買をしないという点でも、「仕組み化」は重要です。相場が大きく下落したとき、手動で都度購入していると「今は待った方がいいかも」と感情が入ります。自動積立なら、下落時も淡々と購入が続きます。これはドルコスト平均法の恩恵でもあり、感情による判断ミスを防ぐ仕組みでもあります。


医師特有の「お金の落とし穴」にも注意

NISAを始める前に、医師が陥りやすいお金の問題についても触れておきます。これらを知っておくことで、より堅実な資産形成ができます。

生命保険・変額保険の過剰加入

医師のもとには、保険会社の営業が頻繁に来ます。「先生の収入なら、これくらいの保障が必要です」と言われ、高額な保険に加入してしまうケースが多い。

特に問題なのが「変額保険」です。変額保険は投資と保障を組み合わせた商品ですが、手数料が非常に高く、純粋な投資商品としては非効率です。「節税になる」と勧められることもありますが、NISAや iDeCo と比較すると、多くの場合で見劣りします。

保険はあくまで「リスクへの備え」。死亡保障が必要なら掛け捨て保険で十分で、投資はNISAで別に行う、という切り分けが基本です。

不動産投資への安易な参入

「節税になる」「医師は属性が高いのでローンが通りやすい」という理由で、ワンルームマンション投資などを勧められるケースがあります。確かに不動産投資は有効な手段の一つですが、知識なく始めると逆効果になることも多い。

まずはNISAで基本を習得し、余力ができてから不動産を検討するのが賢明な順番です。

節税目的での行動の歪み

高税率ゆえに「節税」を強く意識するのは理解できます。しかし、節税のためだけに必要のない物を買ったり、実態のない経費を計上したりするのは本末転倒かつリスクを伴います。

NISAは「合法的に税金を減らしながら資産を増やす」という、最もシンプルで健全な方法です。複雑な節税スキームを探す前に、まずNISAを使い切ることを優先してください。


よくある「やらない理由」への反論

「忙しくて勉強できない」

→ 勉強してから始める必要はありません。口座開設と月1万円の積立設定なら30分で終わります。始めながら学ぶ方が、圧倒的に早いです。

医師の世界でも「臨床は現場で学ぶ」という文化があるはずです。教科書だけ読んでいても診断できるようにはならない。投資も同じで、実際に自分のお金が動き始めると、自然に興味が湧いてきます。「あ、今月は相場が下がっているな」「積立額を少し増やしてみようかな」という感覚は、始めてみて初めてわかるものです。

「今は相場が高い」

→ 積立投資では無関係です。ドルコスト平均法により、高いときは少なく買い・安いときは多く買うが自動で実行されます。むしろ暴落は「安く仕込めるボーナスタイム」と考えるべきです。

「今は高値圏だから待った方がいい」と言い続けると、永遠に始められません。実際に、2020年のコロナショック直前にインデックスファンドを積み立て始めた人も、2024年時点では十分にプラスになっています。相場のタイミングを読むことは、プロでも非常に難しい。タイミングを読まずに始める方が、結果的に良い成績になることの方が多いことは、データが示しています。

「元本割れが怖い」

→ 短期ではあり得ます。しかし長期・分散・積立の3つを守ると、過去データでは20年以上でマイナスはほぼありません(※将来の保証ではありません)。

リスクとリターンは表裏一体です。「絶対に損しない」方法は存在しませんが、「長期で見たときに損する可能性が非常に低い」方法は存在します。全世界株式インデックスへの長期積立がまさにそれです。

また、「元本割れが怖い」という感覚は、インフレを考慮していないことが多いです。現金を銀行に預けておくだけでは、インフレによって実質的な価値が目減りし続けます。「何もしない」ことにも、確実にリスクがあります。

「まとまった資金がないと始められない」

→ これは完全な誤解です。多くの証券会社では月100円から積立を始められます。「月1万円から」でも十分です。大切なのは金額より、始めること・続けることです。

「途中で使いたくなったらどうする」

→ NISAは引き出しに制限はありません。急な出費が必要になった場合でも、いつでも換金できます。ただし、一度使った非課税枠は翌年以降に復活するしくみのため、長期運用を前提にした方が制度の恩恵を最大に活かせます。緊急用の現金は別に確保しておき、NISAはあくまで長期運用の口座として使うのが理想です。


何に投資するか:結論はシンプル

結論から言うと、全世界株式インデックス1本でOKです。

具体的にはeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、いわゆる「オルカン」です。

  • 約50カ国・数千銘柄に分散
  • 低コスト
  • これ1本で”世界経済全体”に投資できる

なぜこれがいいのか、少し補足します。投資信託には「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2種類があります。インデックスファンドは日経平均やS&P500などの指数に連動することを目指し、アクティブファンドはファンドマネージャーが銘柄を選んで指数以上のリターンを目指します。

一見するとアクティブファンドの方が良さそうに見えますが、長期データを見ると、大半のアクティブファンドはインデックスファンドに負けています。さらに、アクティブファンドは手数料(信託報酬)が高いため、複利の恩恵を受けにくくなります。

オルカンの信託報酬は年0.05775%(税込)と、業界最低水準です。これが毎年差として積み重なると、長期では非常に大きな差になります。

「米国株(S&P500)だけでいいのでは?」という意見もあります。実際、S&P500も非常に優秀な選択肢で、長期リターンはオルカンとほぼ同水準です。どちらでも間違いではありません。米国経済の成長に集中したければS&P500、より広く分散したければオルカン、という選び方で問題ありません。

重要なのは、「何を買うか」より「いつ始めるか」です。

👉 外国株・債券・REIT・不動産・国債それぞれの特徴やリスクをもっと詳しく知りたい方はこちら:
資産ごとの特徴を知る|株・債券・REIT・不動産・国債を医師向けに徹底比較


どこで口座を開くか

結論はシンプルです。大手2択。

どちらも手数料・商品ラインナップは申し分なく、NISAの利用においては甲乙つけがたいです。選ぶ基準は「普段どちらのサービスをよく使うか」で十分です。

SBI証券:商品数・ポイント還元が強い。三井住友カードで積立するとVポイントが貯まります。
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楽天証券:楽天経済圏との相性が良い。楽天カードで積立すると楽天ポイントが貯まります。楽天市場や楽天モバイルをすでに使っている方に特におすすめです。
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どちらも優秀なので、迷う時間が一番もったいないです。先に口座を作った方が勝ちです。

口座開設の手順は、基本的にスマートフォンで完結します。マイナンバーカードがあれば最短翌営業日に開設できる場合もあります。「難しそう」というイメージを持っている方も多いですが、実際にやってみると驚くほど簡単です。


具体的な始め方:ステップで確認

「じゃあ実際どうすればいいか」を簡潔にまとめます。

  1. 証券口座を開設する(SBI証券 or 楽天証券。スマホで10〜20分)
  2. NISAのつみたて投資枠を選択する(口座設定の中でNISA口座を選ぶ)
  3. 投資信託を選ぶ(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)で迷わず)
  4. 積立金額と日付を設定する(月1万円〜でOK)
  5. あとは放置(毎月自動で積立が実行される)

所要時間は口座開設〜設定完了まで合計30〜60分ほどです。当直の合間、移動中のスキマ時間でも十分できます。


まとめ:医師がNISAをやるべき理由

  • 退職金に頼れない → 自分で資産形成が必要
  • 高税率 → 非課税メリットが大きい
  • 早く始めるほど有利 → 時間が最大の武器
  • 忙しい → 自動積立との相性が良い

この4つが、医師という職業においてNISAの優先度が高い理由です。どれも「構造」の話であり、個人の努力や才能に関係なく、始めるだけで恩恵を受けられます。

投資に「向いている・向いていない」はありません。必要なのは意思決定だけです。


最後に:今日やるべきことは1つだけ

ここまで読んで、「やった方がいいのは分かった」となったはずです。

あとはシンプルで、口座を開設して、1万円でもいいから積立設定する、これだけです。

完璧に理解してから始める必要はありません。むしろ、始めないことの機会損失の方が大きいです。

医師として患者さんに「早期発見・早期治療」を勧めるように、資産形成も「早期開始」が最大の治療法です。手遅れになってから後悔しないために、今日行動してください。

この記事を閉じたら、そのまま口座開設まで進めてください。それが、将来の自分への一番コスパの良い投資になります。


執筆:Dr.はると(呼吸器内科専攻医・29歳)
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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この記事を書いた人

Dr.はると|呼吸器内科専門医・0歳児パパ
医師として働きながら、資産形成・育児の両立に取り組んでいます。
「医師目線のリアルな情報」を届けるべく、資産形成・育児・医療知識のテーマで発信中。
「難しい情報をわかりやすく」をモットーに、忙しい医師・子育て中の親御さんに役立つ記事を書いています。

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